本作がこれまでの連続テレビ小説と一線を画したのは、偉人礼賛の型を完全に解体した点にある。脚本を手掛けた吉田恵里香は、主人公を完全無欠のヒロインではなく、時に迷い、怒り、過ちを犯す一人の生身の人間として描き出した。不条理に対する「はて?」という口癖は、視聴者が日常で押し殺してきた違和感をすくい上げる強力なトリガーとなった。
その複雑な心情を圧倒的な説得力で体現したのが伊藤沙莉だ。ハスキーな声と豊かな表情筋から繰り出される演技は、歴史上の人物を遠い過去の偶像から、現代の隣人へと引き戻した。悲劇に直面した際の沈黙、怒りを爆発させる法廷シーンの迫力は、テレビ放送業におけるドラマ表現の可能性を一段階押し上げた。
美談に仕立て上げることなく、法の不完全さと社会の構造的差別を真正面から捉えた本作は、伝記ドラマでありながら極めて鋭利なリーガルドラマとして結実した。この挑戦的な姿勢こそが、批評家と一般視聴者の双方から熱烈な支持を集めた理由である。