町田康の表現者としての原点は、1970年代末から1980年代初頭の関西アンダーグラウンド・パンクシーンにあります。1962年に大阪府堺市で生まれた彼は、若干10代にしてパンクバンド「INU」を結成し、町田町蔵の名義でフロントマンを務めました。1981年にリリースされたメジャーデビューアルバム『メシ喰うな!』は、日本ロック史に刻まれる金字塔として現在も熱烈な支持を集めています。
挑発的でありながらどこかユーモラスで、言葉そのものが鋭利な刃物のように突き刺さる町田町蔵の歌詞世界。音楽活動の休止や別ユニットでの活動、俳優としての映画出演などを経て、彼の表現欲求は次第に純粋な「活字の世界」へと向かっていきます。
1992年に詩集『供花』を発表し、1996年には本名である町田康名義で発表した処女小説『くっすん大黒』で第7回野間文芸新人賞と第47回芸術選奨文部大臣新人賞を受賞。元ロッカーの気まぐれな余技という下馬評を完全に粉砕し、文壇へ鮮烈な名乗りを上げました。