物語の発端は、深山に分け入った木こり(あるいは釣り師)の男たちが、渓流の魚を一網打尽にして大儲けしようと企む場面から始まります。彼らが選んだ手段は、川の上流から有毒植物の樹皮やすり潰した実を流し込み、酸欠と中毒で浮き上がった魚を根こそぎ捕らえる「根流し(毒流し)」でした。
男たちが河原で毒の仕込みを行っていると、どこからともなく一人の見知らぬ坊主(僧侶)が姿を現します。坊主は男たちに対し、「この谷の魚を根こそぎ殺すような惨い根流しだけはやめてくれ」「自然の恵みは必要な分だけをいただくものだ」と必死の形相で懇願します。しかし、目の前の大金に目がくらんだ男たちは耳を貸そうとしません。それどころか、昼飯にと持参していた握り飯(伝承によっては焼き餅やすり鉢いっぱいの蕎麦)を恵んでやり、坊主がそれを喉を鳴らして平らげると、適当にあしらって追い払ってしまいました。
男たちは坊主の忠告を完全に無視し、谷川へ毒を流し込みます。やがて水面に無数の小魚が腹を白くして浮かび上がり、歓声を上げる男たちの前に、川底の深みから異様な水音とともに「大蛇か丸太か」と見紛うばかりの巨大イワナが悶え苦しみながら浮かび上がってきました。男たちは主と思しき怪魚の巨大さに驚愕しながらも、大喜びで仕留めて引き上げます。
山小屋に戻り、巨大な獲物を炭火で焼き上げようと腹を裂いた瞬間、現場の空気は凍りつきました。切り開かれた魚の胃袋の中から、先ほど谷で出くわしたあの坊主に食わせたはずの飯が、湯気を立てて未消化のままゴロリと転がり出てきたのです。「あの坊主は、この川の主だったのか……」。戦慄が走ったときには、すでに手遅れでした。直後、小屋を凄まじい地響きと怪奇現象が襲い、男たちは狂乱状態に陥って怪死を遂げる、あるいは命からがら逃げ延びたものの生涯廃人同然となったという、救いようのない結末で幕を閉じます。