イチローが残した影響は、グラウンド内のスコアシートにとどまらない。プロ野球・スポーツ産業全体におけるビジネスモデルや、選手の市場価値の測り方を根本から変革させた。日本人野手がメジャーで通用することを証明したことで、NPBとMLBを結ぶ巨大なマーケットが開拓され、放映権やスポンサーシップのあり方にも地殻変動をもたらした。
さらに、現代のスポーツアナリティクス・伝記の分野においても、イチローのデータは特異点として研究され続けている。打球初速やバレル率といった現代的な指標では測りきれない「スイングの再現性」や「守備位置の逆を突く打球方向のコントロール」。彼のプレーは、データ分析がいかに進化しようとも解き明かしきれない、人間の職人芸の極致として論じられている。
多くの伝記やドキュメンタリーが彼の言葉を掘り下げるのは、そのストイックな生き様がスポーツの枠組みを超え、ビジネスパーソンや表現者にとっても普遍的な人生の指針となっているからだ。