麃公将軍が命を散らす間際、自身の背から外して信に投げ渡した「大盾」。この行動には、単なる形見分けを超えた深遠な意味が込められています。蛇甘平原の戦いにおいて、初陣の歩兵に過ぎなかった信の並外れた生命力と戦才を最初に見出したのは麃公でした。信にとって麃公は、武将としての「本能型の戦い方」を体現して見せてくれた唯一無二の師父のような存在です。
知略で戦局を組み立てる王翦や昌平君に対し、自らの命を前線に晒して兵の士気を極限まで高める麃公の戦術は、極めて高い死亡リスクを孕んでいます。麃公自身、自分がいつ戦場で散るかを悟っており、信の中に自分と同じ「大炎を巻き起こす資質」を見て取っていました。託された盾は、信に対して「生き延びて、本能の火を燃やし続けろ」という無言の激励であり、攻め一辺倒になりがちな若き信の命を守る最後の防壁となったのです。
事実、この盾は後の鄴攻略戦における趙峩龍戦や、その後の幾多の激戦において信の生命を救い、現在では飛信隊の象徴的武具として信の背中に鎮座しています。心理学的な視点からも、親世代から子世代への「承認と役割の継承」が完璧に果たされた象徴的アイテムであり、信が本能型の将軍として開花するための不可欠な精神的支柱となっています。