「音が聴こえれば左右逆でも大した問題ではない」と軽視するユーザーも一部に存在しますが、音響工学および耳鼻咽喉の観点から見ると、イヤホン左右逆につけるデメリットは想像以上に深刻です。
第一に生じるのが「音像定位の完全な崩壊」です。現代の音楽制作(ミキシング工程)では、ボーカルを中央、ドラムのハイハットを左寄り、ギターを左右に振り分けるなど、緻密なパンニング(定位設定)が行われています。左右が逆になると、指揮者の立ち位置から見たオーケストラの楽器配置が反転し、制作者が意図した音場感が根本から損なわれます。
特に影響が致命的なのは、FPSやTPSなどの対戦型オンラインゲーム(『Apex Legends』『VALORANT』など)や映画鑑賞です。左から接近する敵の足音や左後方からの爆発音が右耳から入力されるため、脳の空間認識処理に重大な混乱が生じ、反応速度の遅延を招きます。
第二の盲点が「物理的な耳への圧迫と外耳道トラブル」です。カナル型イヤホンは外耳道のカーブ(S字状)に合わせて斜めにノズルが突き出しています。これを左右逆に無理やり押し込むと、イヤーピースが外耳道の皮膚を強く圧迫し、長時間の使用で痛みや外耳道炎を引き起こすリスクが高まります。密閉度(シールド性)が低下することで低音域が抜け落ち、無意識にボリュームを上げてしまうことによる「イヤホン難聴」のリスクも無視できません。