段田安則という役者を語る上で外せないのが、権力構造の頂点や暗部に佇む人物を演じた際の圧倒的な説得力だ。記憶に新しい大河ドラマ『光る君へ』での藤原兼家役で見せた、権力への執着と老いの惨めさ、そして一族の未来を見据える冷徹な眼差し。声を荒らげることなく、ただ低く静かに放たれる一言が画面全体の空気を凍りつかせた。
彼が演じる「悪」や「野心家」には、単純な勧善懲悪では片付けられない人間の業が蠢いている。どこか品格を漂わせつつも、一線を超えた人間が持つ底なしの恐怖を体現する。視聴者は恐れを抱きながらも、その佇まいから目を離せなくなるのだ。