日常会話において「ものもらい」「めばちこ」「めいぼ」と総称される疾患には、医学的に全く性質の異なる2つの病態が存在します。それが霰粒腫と麦粒腫(ばくりゅうしゅ)です。
霰粒腫の語源は、触れた感触が「霰(あられ)の粒」のようであることに由来します。まぶたの内側には、涙の蒸発を防ぐための脂質を分泌する「マイボーム腺」という極小の分泌腺が、上まぶたに約30個、下まぶたに約20個並んでいます。この管が目詰まりを起こし、脂が排出されずに内部へ貯留した結果、周囲の組織が異物反応を起こして硬い肉芽腫(にくげしゅ)と呼ばれるしこりを形成する病態を指します。
一方、いわゆる一般的なものもらいである「麦粒腫」は、黄色ブドウ球菌などの細菌がまつ毛の根元や脂腺に感染して生じる急性の化膿性炎症です。臨床現場において両者を見分ける最大の判断軸は「痛みの有無」と「発症スピード」にあります。麦粒腫は初期からまぶたが赤く腫れ上がり、瞬きをするだけでもズキズキとした鋭い痛みを伴いますが、霰粒腫は基本的に無痛性であり、触って初めて「中に小さな石のような塊がある」と気付くケースが大半を占めます。
ただし、霰粒腫に後から細菌が入り込んで感染を起こす「急性化膿性霰粒腫」に移行した場合は、赤みと激しい痛みを伴うため、麦粒腫との鑑別には眼科医による細隙灯顕微鏡(スリットランプ)検査が欠かせません。