1992年に放送されたNHKの連続テレビ小説『ひらり』は、従来の朝ドラ像を根本から覆す歴史的一作となった。大相撲をこよなく愛する威勢のいいヒロイン・ひらりと、その姉であるみのり、そして彼女たちを取り巻く人々との間で繰り広げられる恋模様は、どこまでも軽快でありながら、内館牧子ならではの容赦ない本音のぶつかり合いが散りばめられていた。
それまでの朝ドラといえば、戦前・戦後を健気に生き抜く女性の苦難の成長劇が主流であった。しかし、内館氏が投入したキャラクターたちは、自分の欲望に素直で、時にズルく、時に感情を剥き出しにする。世間体を気にする大人たちの嘘を暴くような台詞回しは、当時の視聴者に強烈なインパクトを与えた。NHKの朝の顔として新しい風を吹き込んだ本作は、平均視聴率30%を超える大ヒットを記録。女性が自分らしく生きることの困難と面白さを描き切り、その後の平成ドラマにおける「自立する女性像」の雛形を作り上げたのである。