ゴムを使ってもびくともしない頑固なネジには、熱力学のアプローチが劇的な効果をもたらす。金属は熱すると膨張し、冷やすと収縮する。この単純な物理特性を利用して、固着したネジ山と雌ネジ(相手側の金属)の密着面を引き剥がすのだ。
ヒートガンやドライヤーでネジの周囲をしっかりと加熱した直後、急速冷却スプレーや氷を用いてネジの軸心だけをピンポイントで冷やす。すると、外側の部材と内側のネジとの間にミクロン単位の微少な隙間が生まれる。この瞬間に発生する剥離作用によって、固着していた酸化膜や汚れが破断する。過酷な自動車整備の現場では日常的に使われている手法であり、炙って冷やすという一見単純な操作が、固く閉ざされたねじ山を解放する決定打となる。