なぜ、一頭のサラブレッドがこれほどまでに表情豊かなのか。解剖学的な馬の顔筋の動きを超えて、彼の内面にある強烈な自我がそのまま顔に出てしまう点に最大の秘密がある。意志の強さを示すピンと立った耳、好奇心と警戒心が同居した大きな瞳、そしてリラックス時に見せる緩みきった口元。一瞬ごとに刻々と変わるその相貌は、まるで人間の感情の揺らぎを映し出しているかのようだ。
多くの競走馬は感情を前面に出さないよう調教されるが、彼は違った。自身の感情を包み隠さず「顔」で表現するスタイルが、観る者に強烈な人間味を感じさせる。冷徹なアスリートとしての側面と、無邪気でいたずら好きな少年のような側面。この二面性が、唯一無二の存在感を放つ原動力となっている。