公的に記録された過去の事例を紐解くと、同様の構造的危険性が浮かび上がる。厚生労働省が収集・公表している厚生労働省職場のあんぜんサイトのデータベースには、グリストラップや排水槽の清掃中に起きた凄惨な事故が数多く記録されている。それらの事案を詳細に調べた労働災害分析報告によれば、事故の約8割が「事前の換気不足」および「保護具の未着用」に起因していることが判明した。
とりわけ恐ろしいのは二次災害の発生だ。倒れた同僚を救出しようと、無防備なまま後続のスタッフがグリストラップの坑内や狭小な厨房内へ飛び込み、次々と巻き添えになって倒れる連鎖中毒の事例が後を絶たない。所轄の労働基準監督署も、こうした惨劇を防ぐために定期的な指導や是正勧告を行っているが、アルバイトやパートスタッフの入れ替わりが激しい現場では、安全教育のバトンが途切れてしまう構造的な弱点が残されている。