2008年の米大統領選挙。バラク・オバマ陣営は、当時最先端だったSNSや電子メールリストを駆使し、若年層を中心とする膨大な有権者を動員した。その圧倒的なデジタル戦略の前に、共和党のジョン・マケイン陣営は後手に回った。伝統的なラジオ番組やテレビのトークショーに依存していた保守派コミュニティは、強烈な危機感を抱く。
「このままでは、インターネット空間全体が左派に占領される」
こうした焦燥感の中から立ち上がったのが、保守派ブロガーのマイケル・パトリック・リーヒを中心とする活動家たちだ。彼らはTwitterというリアルタイム性に優れたマイクロブログに着目し、同好の士を可視化するためのディレクトリ(名簿)プロジェクトを開始した。それが「Top Conservatives on Twitter」、すなわち「#tcot」の始まりである。
ハッシュタグが果たした「通信網」としての機能
初期のTwitterには、アルゴリズムによるおすすめフィードや高度な検索機能が存在しなかった。ユーザー同士が特定のテーマでつながる唯一の手段がハッシュタグだった。#tcotの付与は、単に政治的立場を表明するだけでなく、同じ思想を持つ者同士が相互にフォローし合い、情報を爆発的に拡散させる「暗号通信網」として機能した。
それまで孤立していた全米各地の草の根保守層が、タイムラインを通じてリアルタイムに結びついた。朝の情報番組が報じる前に、#tcotのタイムライン上でニュースが検証され、独自の論調が形作られていった。