劇中で強烈な印象を残すのが、作業部屋で繰り広げられるテンポ豊かな会話劇だ。飯豊まりえ、溝端淳平、陣内孝則というキャリアの異なる3人が生み出す空気感は、画面から目が離せなくなるほどの魅力を放つ。
公文(溝端)の偏執的とも言える取材攻勢に対し、すい(飯豊)が見せる戸惑いと次第に開かれていく心。それをハラハラしながら見守り、時には脱線しながら介入する父・丈治(陣内)の絶妙な掛け合い。軽妙な軽口の裏で探り合う視線からは、人間の業や寂しさがにじみ出る。
この3人の巧みなダイアローグこそが、重厚なミステリーの糸を紡ぎ出す推進力となり、物語全体に独自のリアリティと深みを与えていた。