鳥居をくぐると、まず参拝者を迎えるのが広大な「神池(しんち)」です。東西に配置された二つの池には亀島神社が浮かび、初夏には清らかな睡蓮が水面を覆います。背後にそびえる吉備中山の濃緑と池の水面が織りなす空間美は、訪れる者の心を瞬時に静けさへと引き戻します。
参道を進むと姿を現すのが、高さ11.5メートルを誇る「日本一の大燈籠」です。安政6年(1859年)に天下泰平を祈願して天下の名工たちによって建立されたもので、その巨大な石造美は見る者を圧倒します。さらに拝殿の手前右手には、樹齢千年以上と伝わる御神木「平安杉」が堂々たる姿を誇っています。かつて落雷によって主幹を焼損しながらも、驚異的な生命力で青々とした枝葉を広げ続けるその巨木は、現地を訪れた参拝者が思わず足を止め、手を合わせる屈指の御神徳スポットです。
授与所において不動の人気を博しているのが、吉備津彦神社特有の「桃守り」です。古事記や日本書紀において、桃は魔物を退散させる神聖な果実(意富加牟豆美命・おおかむづみのみこと)として描かれており、この神話に由来する桃守りは、丸みを帯びた愛らしいフォルムと確かな厄除け・魔除けの効験で知られています。手のひらに収まるサイズ感と繊細な色彩美から、近年は厄除け祈願のみならず、縁結びや安産を願う若い女性やカップルを中心に高い支持を集めています。
また、御朱印巡りの愛好家にとって吉備津彦神社の御朱印は見逃せません。力強い墨書に神紋の桃が朱印として押された通年拝受の御朱印に加え、夏至の日に授与される「夏至祭限定御朱印」や季節の節目に合わせた意匠など、神職の手により丁寧に奉筆される一枚は、参拝の尊い証として大切にされています。