舞台に足を踏み入れた瞬間、場の密度が一変する。重谷ほたるの真骨頂は、大げさなデフォルメだけに頼らない「リアルな人間味」を感じさせる圧倒的な演技力だ。コテコテの喜劇展開が王道とされる舞台において、彼女が演じるキャラクターにはどこか生々しい愛らしさと哀愁が漂う。
感情を一気に爆発させるセリフ回しから、ふと見せる溜め息ひとつに至るまで、一切の無駄がない。一見すると破天荒に見えるギャグの裏側には、計算し尽くされた緻密な役作りが存在する。だからこそ観客はただ笑うだけでなく、登場人物の物語そのものに深く引き込まれていくのだ。