近年、この店舗は文学作品の舞台としても新たな脚光を浴びた。又吉直樹氏による芥川賞受賞作『火花』において、主人公たちが物語の重要な局面で訪れる象徴的な場所として描かれたことは記憶に新しい。同作がNetflixで世界配信された際には、作品の空気感を追体験しようと訪れる国内外のファンが急増した。
作品に登場したフロアや書棚をそのまま体感できるリアルな存在感は、デジタルメディア時代のエンターテインメントと強固にリンクしている。株式会社紀伊國屋書店は、単なる流通の拠点にとどまらず、作品が生まれる場であり聖地でもあるという立体的な価値を提示した。激変する書籍小売業のなかで、フィクションと現実の境界を溶かし出すような体験型店舗としての役割は増すばかりだ。