インターネットの検索コミュニティやSNS上では、これほど有名な二人がなぜ共演しないのかという疑問から、「実は確執があるのではないか」「共演NGに指定されているのではないか」といった根拠のない憶測が定期的に持ち上がります。しかし、結論を言えば不仲説は完全なデマです。
甲本雅裕と甲本ヒロトが共演しない理由には、甲本雅裕が俳優人生の初期に定めた、揺るぎない覚悟と職業倫理が存在します。
甲本ヒロトがザ・ブルーハーツとして1980年代後半に社会現象を巻き起こしていた当時、弟の甲本雅裕はまだ大学を卒業し、役者を志したばかりの無名時代でした。もしこの段階で「甲本ヒロトの弟」であることを前面に出せば、メディアは面白がり、瞬時に露出の機会を得られたはずです。しかし雅裕は、兄の名前を一切伏せてオーディションを受け続けました。「兄の知名度を利用して役をもらっても、自分の実力にはならない」「一度兄の七光りという色眼鏡で見られれば、俳優として使い物にならなくなる」という強烈な矜持があったためです。
三谷幸喜氏が主宰する「東京サンシャインボーイズ」に入団し、看板俳優の一人として舞台に立ち、映画『ラヂオの時間』やドラマ『踊る大捜査線』シリーズなどで実力を証明するまで、彼は公の場で兄の存在を自ら語ることはありませんでした。一方のヒロトもまた、弟のその意図を痛いほど理解していたため、自身のライブやインタビューで弟の俳優活動を宣伝するような軽率な行動は一切取りませんでした。互いが互いの土俵を神聖な戦場として認め合っているからこそ、安易な「兄弟共演」という客寄せパンダになることを自覚的に拒絶しているのです。