阪神甲子園球場には「魔物が棲む」とよく言われる。独特の浜風、独特の熱気、そして土のグランドが引き起こす予期せぬプレイ。かつてはこの雰囲気を一人で背負い、完投し続けるエース像が美徳とされた。横浜高校時代の松坂大輔が見せた連投劇はその最高峰であり、高校野球史の象徴でもある。
しかし、現代の甲子園において一人のエースに依存する戦術はリスクでしかない。酷暑の中での連戦、投球数制限の壁、そしてデータ分析が進んだことによる狙い球の絞り込み。現代の強豪校はいかに「エースを休ませつつ勝ち上がるか」という組織力勝負へとシフトしている。エースの個人能力だけに頼らないチーム全体の底力こそが、過酷なトーナメントを制する絶対条件なのだ。