家族歴を巡って多くの受診者が抱くもう一つの切実な不安が、「問診票に家族の重い病歴を書くことで、生命保険や医療保険に入りづらくなるのではないか」という経済的なリスクへの懸念です。
結論から述べると、日本の民間生命保険の標準的な告知書において、被保険者(本人)以外の「家族の病歴」を告知させるケースは極めて限定的です。告知義務の対象は、原則として「被保険者本人の現在の健康状態、過去の既往歴、健康診断結果」に限られています。
日本損害保険協会や生命保険協会など保険業界の自主ガイドラインにおいても、不当な遺伝差別や親族の病歴による引受謝絶を防ぐ観点から、家族歴の告知要求には非常に慎重な配慮がなされています。特定の女性疾病特約や特殊な終身保険などで「血縁者に所定のがん歴があるか」を確認する設問が例外的に設けられている場合を除き、一般的な生命保険で家族歴を理由に保険料が割り増しされたり、加入を拒否されたりする事態は基本的に起こり得ません。
ただし、「健康診断の結果表に医師の指示(要精密検査・要再検査)が記載されている場合」は注意が必要です。問診票に家族歴を書いた結果としてカルテに記録が残ること自体は告知事項ではありませんが、それによって受けた検診結果で異常を指摘された場合、その「検査結果そのもの」は保険会社への正確な告知義務が発生します。家族歴を隠そうとするのではなく、自身の健康状態を客観的に管理する姿勢が求められます。