なぜ実在しない人物が、これほど長期間にわたって「実在するレジェンド」として誤解され続けてきたのでしょうか。そこには情報拡散のメカニズムにおける2つの盲点があります。
第1の盲点は、「実在する地域名」と「リアルなアウトロー用語」の親和性です。東京都江戸川区は、葛西や小岩などを中心に実際に独自のストリートカルチャーや不良文化が存在したエリアです。地域の実態を知る者であれば「ありそうな名前」として受け止めやすく、虚構と現実の境界が容易に曖昧になってしまいました。
第2の盲点は、アルゴリズムによる情報の増幅です。検索エンジンのサジェスト機能やSNSのレコメンド機能は、ユーザーが興味本位で「江戸川一家 総長」「堀田雅也 現在」と検索すればするほど、関連キーワードとして上位に表示します。その結果、「検索候補に出るのだから実在するに違いない」という確証バイアスが働き、実態のないキーワードが自己増殖を繰り返す事態に陥ったのです。
暴走族OBへの丹念な聞き取り取材やノンフィクション書籍の執筆を手掛けるライター陣の間でも、「堀田雅也」という人物が話題に上ることはまずありません。昭和のアウトロー史を真面目に研究する立場から見れば、ネットの噂は完全なフィクションとして整理されています。