「龍恋の鐘を鳴らしたカップルは別れる」というジンクスについて、地元関係者への取材や歴史的文献を紐解くと、主に2つの明確な要因が浮かび上がってきます。決してこの場所自体が縁切りの力を持っているわけではありません。
第1の要因は、江島神社に祀られている弁財天(弁天様)にまつわる古典的な俗説との混同です。古くから日本各地の弁天スポットでは「女性の神様である弁天様がカップルの仲に嫉妬して別れさせる」という民間伝承が語られてきました。上野の不忍池や井の頭公園のボートと同様に、江の島全体にもこの話が広がっており、後年(1996年)に整備された龍恋の鐘にもそのイメージがそのまま重ね合わされてしまった経緯があります。
第2の要因は、極めて現実的な「過酷な移動による身体的・精神的疲労」です。江の島は周囲約4kmの起伏に富んだ島であり、龍恋の鐘がある恋人の丘は島の奥深い頂上付近に位置します。急な石段やアップダウンが連続するため、ヒールや履きなれない靴で訪れたパートナーが疲弊し、些細な会話の行き違いから不機嫌になって口論に発展するケースが後を絶ちません。
恋愛心理学では、極度の身体的ストレス下にある際、相手のちょっとした配慮の欠如が決定的な幻滅につながる「認知的評価の歪み」が指摘されています。鐘を鳴らしたから別れるのではなく、「準備不足と過酷な行程によって関係性の綻びが露呈した」というのが、噂の真の正体です。