この地域を語る上で欠かせないのが、大規模なV字状の溝で区画された環濠集落としての側面だ。幾重にも巡らされた深い溝は、一見すると外敵の侵入を防ぐ強固な軍事要塞を思わせる。
しかし、近年の掘削調査によって得られた流体解析データは、別の可能性を提示している。この環濠は単なる防壁ではなく、物資を船で運び込むための水路網として機能していた公算が大きいのだ。湿地帯の湧水を巧妙にコントロールし、水運と生活用水、そして防衛の3つを同時に満たす土木技術。当時の人々が持っていた環境適応能力と知恵の高さには、息をのむものがある。