「仕事のプレッシャーが極限に達した時期に突然発症した」という患者の声は、皮膚科の診察室でも極めて頻繁に聞かれます。では、ジベル薔薇色粃糠疹の原因と真相において、心理的・肉体的ストレスはどこまで関与しているのでしょうか。日本皮膚科学会の見解やウイルス学の研究データを総合すると、ストレスは直接の発症物質ではなく、体内で眠っていたウイルスを呼び覚ます「トリガー(引き金)」として機能していることが突き止められています。
最大の鍵を握るのは、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)および7型(HHV-7)の原因関与です。これらのウイルスは、日本人のほぼ100%が生後数ヶ月から幼少期にかけて突発性発疹などを通じて初感染し、その後は体内の単核球やリンパ球の中に生涯潜伏し続けます。通常は強固な免疫システムによって厳重に封じ込められていますが、極度の疲労や睡眠不足、環境変化による過度な心労が重なると、ジベル薔薇色粃糠疹はストレスによる免疫力低下を契機としてウイルスが局所的に再活性化します。
再活性化したウイルスそのものが全身で暴れるのではなく、宿主の免疫細胞がウイルス成分に反応して一時的なアレルギー様炎症カスケードを起こすことで、特徴的なばら色の皮疹が形成されます。すなわち、この病気は外から未知の病原体に侵されたわけではなく、心身の過負荷によって防壁が緩んだ結果生じる「内因性の免疫応答エラー」と捉えるのが、現在の医学界における定説です。