錦町店がなぜこれほどまでに米子市民の記憶に深く刻まれているのか。その理由は、同店が単なるモノを売る店舗ではなく、地域の「サードプレイス(第3の居場所)」として機能していた点にあります。
現場を長年利用していた地域住民への聞き取りでは、店舗固有の使い勝手の良さが証言されています。
「錦町の交差点に近く、駐車場への出入りがスムーズだった。大型モールのように店内を何百メートルも歩く必要がなく、車を降りて3分で目的の新刊を手にしてレジを抜けられる。あの絶妙なサイズ感が忙しい社会人には最高でした」
また、米子東高校をはじめとする近隣の教育機関に通っていた卒業生たちにとっては、思春期の知的好奇心を受け止める揺籃(ようらん)でもありました。受験勉強の合間に文房具を新調し、赤本や大学受験ラジオ講座のテキストを立ち読みし、少し背伸びをして文庫本の棚を眺める――。ネットアルゴリズムによる最適化された推薦とは対極にある、「予期せぬ本との偶発的な出会い(セレンディピティ)」が、あの木目調のフロアには息づいていました。