事件発生直後から世間の関心が集中しているのが、結希さんを最後に乗せていた「父親の車のドライブレコーダー」に何が映っていたのかという疑問です。車内や前方・後方を常時記録するドラレコは、男児がどこで降車し、どちらの方向へ向かったのかを証明する唯一無二の客観的証拠になり得ます。しかし、京都府警および捜査関係者は、現在に至るまでドラレコの映像内容や車載データの有無について一切公表を行っていません。
この非公開措置に対し、一部のネットユーザーや動画配信者の間では「警察が何かを隠蔽しているのではないか」「映像が存在しないこと自体が怪しい」といった過激な論調が広がりました。しかし、元捜査関係者や刑事司法の専門家が指摘する「ドラレコ非公開の正当な理由」は、主に以下の3点に集約されます。
第一に、「捜査の密行性と犯人・関係者への手の内隠蔽」です。仮に第三者による連れ去りや不審車両の関与が疑われる場合、ドラレコが捉えた映像の画角、通過時刻、音声データの内容を不用意に公表すれば、関与した人物に逃走や証拠隠滅の猶予を与えることになります。捜査機関が決定的な証拠を手元に留めるのは、初動捜査における鉄則です。
第二に、「高度なデジタルフォレンジック(電子鑑識)の作業中である点」が挙げられます。京都府警の科学捜査研究所は、車載機器のメモリーカードから上書き・断片化した映像の復元作業を進めるとともに、車載GPSのログと周辺の民間防犯カメラ映像、さらには通過車両のドラレコデータをミリ秒単位で照合しています。単に「映像を見る」だけでなく、失踪直前に発生したとされる「空白の約40分間」の移動経路と車内外の音声ログを多角的に突き合わせている段階であり、中途半端な段階での公開は捜査を混乱させる要因になりかねません。
第三に、「失踪児童および家族のプライバシー保護とセカンド被害の防止」です。車載カメラには家族間の極めて私的な会話や生活音、個人情報が克明に記録されています。これらを一般に開示することは、ただでさえ心労の極限にある家族に対する重大な人権侵害に直結します。