「京都市の市外局番=075」という認識は、一般的な常識として広く定着しています。しかし、実際の通信インフラに目を向けると、この図式は完全には成り立ちません。象徴的な例が、2005年に京都市へ編入合併された旧京北町エリアです。現在の京都市右京区京北町市外局番には、隣接する自治体と同じ「0771」がそのまま使われ続けています。そのため、同じ京都市役所本庁舎と右京区京北出張所の間で固定電話をかける際にも、市内通話ではなく市外通話の料金と発信手順が適用されるという逆転現象が残されています。
こうした現象が生まれる背景には、京都固定電話市外局番境界線の経緯が深く関わっています。NTT西日本が定める電話網のエリア区分は「単位料金区域(MA:メッセージエリア)」と呼ばれ、昭和中期の電電公社時代に整備された通信線路や交換機の物理的な配置を基準に設計されました。平成の大合併によって自治体の行政境界が大きく塗り替えられたものの、交換設備の収容替えや全世帯・事業所の電話番号変更には莫大な設備投資と社会的混乱が伴うため、かつての通信境界線が現在に至るまで温存されているのです。
さらに興味深いことに、市外局番075対象地域は京都市内にとどまりません。南側に隣接する向日市や長岡京市、乙訓郡大山崎町はもちろん、滋賀県大津市山中町の一部地域までもが「075」エリアに含まれています。府境を越えて滋賀県の一部にまで京都の市外局番が食い込んでいる事実は、インフラの敷設ルートや当時の経済圏のつながりが行政区分以上に優先された歴史的証左といえます。