建築ファンを唸らせる見事な造形美も、この空間を訪れる大きな目的の一つです。京都市下京区岩戸山町に位置するこの建物は、昭和7年(1932年)頃に建てられた大規模な近代和風住宅。職人の高度な技術と良質な木材がふんだんに用いられた、当時の町家建築の粋が凝縮されています。
建物内部に入ると、まず目を奪われるのが高く開放的な吹き抜け構造の「火袋(ひぶくろ)」と、天井を支える太い大黒柱です。表通りから奥へと細長く続く伝統的な「ウナギの寝床」の形状を踏襲しながらも、随所に洗練された数寄屋風の意匠が散りばめられています。
特に見逃せないのが、建物の中に光と風を届ける坪庭の見どころです。表庭、中庭、そして一番奥に広がる奥庭と、視線を進めるごとに表情を変える緑のグラデーションは圧巻。雨の日には濡れた飛び石と苔が艶やかに輝き、晴れた日には格子越しに落ちる木漏れ日が畳の上に美しい陰影を描き出します。縁側に腰を下ろして庭のせせらぎや木々の揺らぎに耳を澄ませるだけで、心洗われるひとときを過ごせます。