地上を出て階段を少しずつ降りていくと、空気の質が変わるのを感じるはずだ。視界に飛び込んでくるのは、深い赤を基調とした壁と、ヨーロッパの蚤の市から買い付けられたかのような味わい深いアンティーク家具たち。天井から吊り下げられたシャンデリアの仄かな光が、テーブルに怪しい影を落とす。
ここには、現代の効率主義的なカフェが削ぎ落としてしまった「無駄」や「色気」が濃密に凝縮されている。カウンター越しに聞こえるグラスの触れ合う音、低音で流れるJazzやシャンソン。時間の流れが地上よりも明らかに遅い。スマートフォンの画面を伏せ、ただ空間に身を委ねたくなる不思議な魔力がここには潜んでいる。