ネットカルチャーにおいて広まった「メンヘラ」という俗語と、精神医学における「境界性パーソナリティ障害」は根本的に性質が異なります。前者は単にかまってほしい態度や恋愛依存全般を指す軽微なスラングとして乱用されがちですが、BPDは生活や人間関係が破綻しかねない深刻な精神疾患です。
医療現場で定義される境界性人格障害の特徴的な行動パターンには、明確な傾向が存在します。その根底にあるのは、他者から見捨てられることに対する耐えがたい恐怖(見捨てられ不安)です。相手を「完璧な救世主」として過度に理想化したかと思えば、少し連絡が遅れただけで「自分を裏切った最低の人間」と激しく罵倒する「白黒思考(スプリッティング)」が典型例として挙げられます。
さらに、感情のブレーキが利かなくなる情動の不安定さ、衝動的な浪費や過食、アルコール依存、自傷行為などの自己破壊行動も顕著です。芸能人がSNSで突然関係者を痛烈に批判したり、衝動的な引退宣言を繰り返したりする姿がBPDと結びつけて語られるのは、こうした劇的な感情の起伏が世間の目に留まりやすいためです。