昭和43年8月17日の夜、乗鞍岳への日の出を見に行くために名古屋市を出発した観光バスの車列は、激しい豪雨に見舞われていた。台風10号から送り込まれた湿った空気がもたらした集中豪雨は、岐阜県加茂郡白川町の国道41号線上を走るバスの行く手を阻んだ。前方も後方も土砂崩れによって塞がれ、完全に孤立したバス。乗務員や乗客たちは、暗闇の中で立ち往生するしかなかった。
運命の瞬間は、翌18日の午前2時11分に訪れた。轟音とともに背後の斜面が崩壊。大量の土砂がバスを直撃し、ガードレールをなぎ倒しながら、増水して荒れ狂う飛騨川へと押し流した。濁流に呑まれたバスは瞬時に沈没し、救助活動すらままならない暗闇の中で、多くの命が冷たい水底へと消えていった。