こうした身体的コミュニケーションに対する世間の視線や幻想は、メディア作品によっても大きく形作られてきた。世界的なヒットを記録したNetflixのオリジナル映画『キスから始まる物語』は、学園祭のキスブースという祝祭的空間を舞台に、若者たちの甘酸っぱい恋愛と葛藤を描き出し、若年層の恋愛観に多大な影響を与えた。
映画やドラマの中でドラマチックに演出される「予期せぬキス」は、視聴者に強いカタルシスを与える。しかし、現実空間における合意のない接触は、ロマンスではなく恐怖や嫌悪感をもたらすのが現実だ。エンターテインメントがもたらすロマンチシズムと、実際の対人関係における倫理的境界線との乖離について、改めて冷徹な視線が求められている。