大学駅伝の歴史は、彼が登場する前と後で完全に分断されたと言っても過言ではない。東京国際大学駅伝部のユニフォームを身にまとい、箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)の舞台に降り立ったイエゴン・ヴィンセントは、従来の記録水準を一気に別次元へと引き上げた。
2区、3区、そして過酷を極める復路や往路の要所。どの区間に配置されても、時計の針を異常なペースで進めていく姿はまさに圧巻だった。関東学生陸上競技連盟が統括するこの伝統大会において、過去の名ランナーたちが積み上げてきた歴代記録をやすやすと更新していく様は、お茶の間の視線を釘付けにした。
その走りは日本テレビ放送網による生中継を通じて列島中に配信され、リアルタイムの熱狂を生んだ。テレビの前で息を呑んだファンはもちろん、TVerなどの見逃し配信で何度もそのフォームをスロー再生したランナーも多い。留学生ランナーの基準そのものを根本から書き換えた瞬間だった。