膨大な情報が飛び交うインターネット上では、本作に関して事実とは異なる言説が独り歩きしているケースも見受けられます。取材データおよび公式記録に基づき、代表的な2つの誤認を是正します。
誤解1:最初からスポーツ応援ソングとして企画された?
センバツ高校野球の入場行進曲やマラソンの印象があまりに強烈なため、「スポーツイベントのタイアップのために書かれた曲」と誤解されることが多々あります。しかし前述の通り、当初のオファーは恋愛模様を描くトレンディドラマ『白鳥麗子でございます!』の主題歌です。華やかなラブコメディのエンディングとして構想されたからこそ、歌詞の中には「恋した」「視線がぶつかる」といった私小説的なフレーズが息づいています。スポーツの文脈に寄り添いすぎなかったことが、結果としてあらゆる人生の局面に当てはまる普遍性を獲得させました。
誤解2:坂井泉水は制作現場で受動的だった?
ビーイングのシステマチックな制作体制から、「シンガーはプロデューサーやディレクターの指示通りに歌っていただけではないか」という偏見が語られることがあります。しかし実態は正反対でした。坂井さんはスタジオでのボーカルディレクションにおいて、自らの意志を極めて明確に反映させるアーティストでした。サビのファルセットと地声の切り替え、語尾の息の抜き方、歌詞の語順の入れ替えなど、自身が納得するまで何十テイクも録音を重ねる妥協なきクリエイターであったことが、没後に公開された数々のレコーディング日誌や関係者の手記で裏付けられています。