「八重歯の矯正=飛び出ている八重歯を抜く」と思い込んでいる方は少なくありません。しかし、歯科医療の現場において、八重歯(正式名称:犬歯/糸切り歯)そのものを抜歯することは原則としてありません。
犬歯は、すべての歯の中で最も根が太く長く、加齢による影響を受けにくいため、お口の中で「最も寿命が長い歯」として知られています。さらに、下顎を左右にギリギリと動かした際に奥歯を守る「犬歯誘導(カスピッド・プロテクテッド・オクルージョン)」という重要な役割を担っています。この犬歯を失うと、将来的に奥歯へ過度な負担がかかり、歯の破折や顎関節症のリスクが跳ね上がってしまうのです。
では、八重歯矯正において「どこを抜くのか」というと、八重歯のすぐ後ろにある「小臼歯(しょうきゅうし=前から4番目または5番目の歯)」を間引くのが標準的です。小臼歯は上下左右に2本ずつ計8本あり、1本抜いても噛み合わせ全体のバランスを保ちやすいため、歯列を美しく整えるためのスペース(隙間)作りに最も適した歯として選択されます。