家庭で西京焼きを失敗する最大の要因は、味噌に含まれる糖分と魚の水分処理にある。辻調理師専門学校で教鞭を執る職人たちや、メディアで軽妙かつ正確な和食を伝える料理人の笠原将弘氏が口を揃えて強調するのは、「事前の振り塩」と「味噌床の比率」だ。
魚の重量に対して1%程度の塩を振り、20分から30分ほど置いて浮き出た余分な水分と生臭さを徹底的にペーパーで拭き取る。この下処理を怠ると、魚から出たドリップで味噌床が緩み、生臭さが身の芯に戻ってしまう。プロが明かす味噌床の黄金比は、西京味噌200gに対し、みりん大さじ2、煮切った酒大さじ2、そして隠し味としての薄口醤油小さじ1。砂糖を過剰に足す必要はない。西京味噌自体の豊かな糖度だけで十分な深みが出る。
さらに、焦げ付きを恐れて味噌を水で洗い流すのは禁物だ。身にガーゼを一枚かませて味噌床に漬ける「ガーゼ漬け」を採用すれば、旨味の成分だけを浸透させつつ、焼く際に味噌を拭き取る手間も省け、焦げのリスクを劇的に下げることができる。漬け込み時間は48時間。これ以上長くなると身が締まりすぎてパサつきの原因になる。