なぜ数ある通貨の中でも特定の種類だけが独特の変色を起こすのだろうか。その鍵は、素材として採用されている金属の比率にある。日本の五円硬貨は、銅と亜鉛を一定の割合で混ぜ合わせた真鍮(しんちゅう)と呼ばれる合金で作られている。
銅は酸素や空気中の湿度、あるいは人間の手から付着した皮脂などに非常に敏感だ。大気中に放置されると表面の銅原子が酸素と結びつき、酸化銅という皮膜を形成する。この酸化皮膜こそが、硬貨全体を覆う茶褐色や黒ずみの直接的な正体である。
この化学変化は金属を保護する自然な防衛反応でもあるが、見栄えを損ねる原因となる。表面の酸塩基反応を理解すれば、どの物質を組み合わせれば元の金属面が露出するのかを理論的に導き出すことができる。