初登場時の時透無一郎は、どこか上の空で、他者への関心を持たない冷徹な少年として描かれていた。合理性のみを重んじ、弱者を切り捨てるかのような言葉を吐く彼に、冷たさを感じた読者も少なくなかったはずだ。しかし、その無表情の裏には、過酷な過去による記憶喪失という深い傷が隠されていた。
彼の心を溶かしたのは、主人公・竈門炭治郎の愚直なまでの優しさだった。「人のためにすることは結局 巡り巡って自分のためにもなる」。この言葉が引き金となり、刀鍛冶の里での死闘を通じて無一郎は失われた記憶を取り戻す。かつての彼は、誰よりも優しく、他者のために命をかけられる少年だったのだ。記憶の覚醒とともに瞳に光が宿り、表情が豊かになっていくプロセスは、多くの視聴者に「人間性の回復」という深い感動を与えた。