メディアの下馬評をことごとく覆し、不動産王ドナルド・トランプがアメリカ合衆国大統領選挙を制した瞬間、ワシントンのみならず全世界の政治中枢が凍りついた。既成政客の言葉に失望していたラストベルト(錆びた工業地帯)の労働者層を熱狂させたのは、過激で剥き出しのナショナリズムだった。
この選挙戦を決定づけたのは、デジタルメディアのアルゴリズムが生み出すエコーチェンバー現象だ。フェイクニュースが飛び交い、感情を煽る短いフレーズが拡散される。従来のジャーナリズムが機能不全に陥るなかで、政治は「事実の検証」から「感情の扇動」へと舵を切った。国際協調から自国第一主義へ。世界のパワーバランスが決定的に揺らいだ瞬間だった。