高倉さんは自らの主演作が決まるたび、映画会社や監督に対して「小林稔侍を使ってほしい」と熱心に推薦し続けました。そうして実現した共演映画の数々が、役者・小林稔侍の評価を決定的なものへと押し上げていきます。
1978年に公開された倉本聰脚本、降旗康男監督の傑作『冬の華』では、高倉さん演じる主人公の周囲で生きる男の一人として強い印象を残しました。さらに1983年の名作『居酒屋兆治』では、兆治(高倉健)の店に集う常連客・神谷役を好演。不器用ながらも温かい人間味が交錯する酒場の空気感は、二人がプライベートで築き上げてきた空気そのものがフィルムに焼き付けられたかのようでした。
『駅 STATION』(1981年)や『夜叉』(1985年)など、名匠たちと高倉さんがタッグを組んだ現場には、常に小林さんの姿がありました。高倉さんは現場で小林さんを特別扱いすることはなく、むしろプロの役者同士として厳しい視線を送ることもありました。それに小林さんも見事な演技で応え、いつしか「高倉健の映画に欠かせない唯一無二のバイプレイヤー」としての地位を確立していったのです。