糸守町という土地そのものが、実は気の遠くなるような時間をかけて繰り返されてきた「隕石落下の歴史」を物語っています。町の中央に広がる美しい真円形の糸守湖は、約1200年前に発生した前回のティアマト彗星接近時に形成された衝突クレーター湖です。さらに、宮水神社の御神体が鎮座するカルデラ状の窪地もまた、約2400年前に落下した隕石跡であることが作中の設定資料や風景描写から読み取れます。
宮水神社に代々受け継がれてきた伝統工芸である組紐(くみひも)の文様や、神楽の舞、巫女が口噛み酒を奉納する神事には、すべて「空が割れて星が降る」という過去の天変地異の記憶がシンボルとして織り込まれていました。200年前に起きた「繭五郎の大火」によって記録としての古文書はすべて灰燼に帰してしまったものの、形を変えた神道的な儀礼として、子孫たちへ危険を知らせるタイムカプセルが受け継がれていた点は、本作屈指の重厚なプロットと言えます。