小児科の外来診察室や、乳幼児の定期健診の現場を取材すると、保護者が抱える精神的ストレスの大きさが浮き彫りになります。都内の小児科クリニックに勤務するベテラン小児科医は、次のように現場の空気感を語ります。
「1歳半健診などで、お腹や背中に1センチほどの薄茶色のアザが1つあるのを見つけたお母さんが、血相を変えて『先生、これレックリングハウゼン病ですよね? 発達障害になるんですよね?』と泣き崩れそうになりながら質問してこられる場面に幾度も立ち会ってきました。スマートフォンですぐに難病情報にアクセスできる時代になったことで、かえって断片的な医療情報が保護者を追い詰めている現状を痛感します」
育児掲示板やSNS上の投稿を分析しても、「茶あざが2個見つかってから子どもの目線が合わない気がしてノイローゼになりそう」「検索すればするほど最悪のケースばかり目に入り、夜も眠れず赤ちゃんの体をくまなく探しては新しいシミを見つけて絶望している」といった手記が数多く確認できます。こうした反応は心理学でいう「確証バイアス」と「サイバーコンドリア(ネット検索による過度の健康不安)」が引き起こす典型例です。
乳幼児期におけるカフェオレ斑の赤ちゃんの見分け方として、皮膚科医が着目するのは「輪郭の形状」と「色調の均一さ」です。一般的な扁平母斑は、周囲との境界がギザギザとして海岸線のようになっていたり、色に濃淡があったりすることが少なくありません。一方、NF1に伴う典型的なカフェオレ斑は、まるでコインを置いたかのように境界がなめらかで均一な薄茶色を呈することが多いとされています。ただし、乳児期の皮膚は極めて繊細であり、肉眼だけで確定診断を下すことは専門医であっても困難です。自己観察で小さなシミを数え上げて精神を摩耗させることこそ、現場の医師がもっとも警鐘を鳴らしているポイントです。