看護必要度A項目の運用において、最も巨額の返還金トラブルに発展しやすいのが「救急搬送後入院」のカウントミスと、厚生労働省・地方厚生局による「適時調査」での指摘事例です。
救急搬送後入院の算定日数と「起算日」の罠
救急搬送後入院は、一挙に2点を獲得できる極めてインパクトの大きい項目です。しかし、算定できる日数には明確な上限が定められています。現行基準では「搬送された日(入院日)を含めて最大5日間」です。ネット上の古いまとめ記事や過去のマニュアルをそのまま参照し、「7日間算定できる」と誤認して請求を続けていた病院が、事後調査で数百万円の過誤調整を命じられた事例が報告されています。また、他院からの転院搬送の場合、前医の入院期間が通算されるケースがあるなど、厳密なレセプト確認が欠かせません。
適時調査で実際に指摘されたNG事例集
地方厚生局が実施する適時調査では、カルテと請求データが1件ずつ照合されます。過去に実際に見られた指摘事例には以下のようなものがあります。
- 医師の指示なき創傷処置:看護師が自主的に創傷被覆材を交換していたが、カルテ上に医師の具体的な処置指示(指示日・部位・処置内容)が存在しなかったため全件否認。
- 呼吸ケアの記録欠落:EFファイル上でネブライザー薬剤の請求があるものの、看護記録に吸入実施の記載や患者のバイタル変化が一切残っていなかった。
- シリンジポンプの終了時間未記載:投与開始の記録はあるが、終了・抜去の記録がなく、算定対象時間を超えて過剰にカウントされていた。
【プロの結論】算定漏れを防ぐ仕組み化とおすすめ運用の判断基準
個々の看護師の記憶や努力に依存した評価体制は破綻を招きます。病院経営と看護の質を両立させるためには、組織的な「システム連動」と「教育スキーム」の構築が唯一の解です。
【今すぐ導入すべき病棟運用の条件】
・電子カルテの処置入力画面と、医事請求コードが1対1で自動連動するテンプレートを配備している。
・医事課と病棟リンクナースが週1回、基準達成率とEFファイルの乖離データを突き合わせるカンファレンスを実施している。
・新入職・中途看護師に対して、年1回以上の看護必要度eラーニング受講と判定テストを義務付けている。
【今すぐ見直すべき危険な病棟運用の条件】
・処置の実施記録は書いているが、医師オーダの確認や病名漏れを現場がチェックしていない。
・看護必要度IIを採用しているにもかかわらず、日々の入力チェックを月末のレセプト請求時にまとめて行っている。
・疑義解釈が更新されても、師長止まりで一般病棟スタッフへの周知共有プロセスが存在しない。