駅舎そのものがひとつの美術作品である事実を、どれほどの人が意識して歩いているだろうか。現在のモダンな駅舎は、プリツカー賞受賞歴を持つ世界的建築家・坂茂氏が設計を手掛けた傑作だ。ガラスカーテンウォールと地元産秋田杉の集成材を組み合わせた立体トラス構造は、外光をふんだんに採り入れ、豪雪地帯特有の重苦しさを一切感じさせない。
インフラの近代化を推し進める東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)が地域社会と一体となって生み出したこの空間は、国内の鉄道旅客運送業における駅舎デザインの最高峰といっても過言ではない。2階の吹き抜け回廊から見下ろす幾何学的な木組みの陰影は、朝夕の斜光によって刻一刻と表情を変える。列車を待つ数十時間を豊かな鑑賞体験に変えてしまう圧倒的な設計美学が、ここには息づいている。