バニラエッセンスが苦い理由を解明する鍵は、そのパッケージ裏に記載された原材料表示にあります。多くの人が「甘いバニラの果汁や濃縮シロップ」のようなものを想像しがちですが、実際の原材料は極めてシンプルかつ刺激的な構成です。
一般的な製品の原材料表示を見ると、記載されているのは主に「エタノール(酒精)」「香料(またはバニラ抽出物)」「水」「グリセリン」などです。ここに砂糖や果糖ぶどう糖液糖といった糖類は一切含まれていません。つまり、液体そのものに甘味成分は1ミリグラムも入っていないのです。
さらに注目すべきは、ベースとなっている溶媒です。天然のバニラビーンズに含まれる香り成分「バニリン」をはじめとする数十種類の芳香物質は、水にはほとんど溶けず、アルコールに溶けやすい性質(脂溶性・親油性)を持っています。そのため、香気成分を効率よく抽出し、液体中に均一に保持するためには高濃度のエタノールが不可欠となります。
製品によって多少の前後はあるものの、市販されているバニラエッセンスのアルコール度数はおおむね30度〜40度前後に達します。これは一般的なウイスキーやラム酒、ウォッカと同等の度数です。つまり、バニラエッセンスを原液のまま口に含む行為は、40度の高濃度アルコールに超高濃度の香料エキスを溶かした薬品をそのまま舌に垂らしている状態と同義です。舌の味蕾(みらい)が感じるのは「甘さ」ではなく、高濃度アルコールによる刺激痛と、濃縮されすぎた植物性香気成分由来のエグ味・苦味になります。