キーセン(妓生)とは、朝鮮半島において宮中行事や官庁、両班の宴席などで歌舞や詩歌、楽器演奏を披露しもてなした専門の女性芸能者です。その起源は高麗時代にさかのぼり、朝鮮王朝(1392〜1910年)時代に制度として完成しました。
彼女たちの最大の特徴は、「身分は最下層の賤民(せんみん)、教養と芸は最高峰の両班並み」という極端な二重構造にありました。国家に所属する「官妓(カンギ)」として名簿(妓籍)に登録され、幼少期から「掌楽院」や地方の「教坊(キョバン)」と呼ばれる専門施設で英才教育を受けました。
キーセンは一括りにされがちですが、内部には厳格な3つの階級が存在していました。
宮廷の公式行事や両班の相手を務める最上位の「一牌(イルペ)」は、伽倻琴(カヤグム)やパンソリなどの朝鮮半島の伝統芸能、漢詩の詠唱や書画に卓越しており、原則として売春は禁じられていました。中級官吏などを相手にする「二牌(イペ)」、そして庶民を相手に主に売淫を行った「三牌(サムペ)」へと分かれており、水揚げの儀礼が重んじられたのは主に一牌や二牌に属する格式ある妓生たちでした。