外郎売のセリフ全文とふりがな解説|プロが教える滑舌向上の極意

外郎売のセリフ全文とふりがな解説|プロが教える滑舌向上の極意

外郎売のセリフ全文とふりがな解説|プロが教える滑舌向上の極意の要点を詳しく解説してご紹介します。

外郎売の口上は、大きく分けて「導入(名乗り)」「薬の由来と効能」「服用の描写」「早口言葉の言い立て」「結び」の5つのブロックで構成されています。まずは全体のセリフをふりがな付きで確認し、それぞれの場面が何を語っているのかを把握しましょう。

外郎売 セリフ全文(読み仮名付き)

【第1ブロック:導入・名乗り】
拙者親方(せっしゃおやかた)と申(もう)すは、御立会(おたちあい)の内(うち)に御存知(ごぞんじ)の御方(おかた)も御座(ござ)りましょうが、御江戸(おえど)を発(た)って二十里上方(にじゅうりかみがた)、相州小田原一色町(そうしゅうおだわらいっしきまち)をお過(す)ぎなされて、青物町(あおものちょう)を上(のぼ)りへお出(い)でなさるれば、欄干橋虎屋藤右衛門(らんかんばしとらやとうえもん)、只今(ただいま)は剃髪(ていはつ)致(いた)して、圓斎(えんさい)と名乗(なの)りまする。

【第2ブロック:薬の歴史と由来】
元朝(がんちょう)より大晦日(おおつごもり)まで、お手に入れまする此(こ)の薬(くすり)は、昔(むかし)陳宗敬(ちんそうけい)という人(ひと)、我(わ)が朝(ちょう)へ渡(わた)り、帝(みかど)へ参内(さんのう)の折(おり)から、頂(いただ)戴(いた)だく此(こ)の薬(くすり)でござる。
貴賎群衆(きせんぐんじゅ)に拝(おが)み頂(いただ)くは、一(ひと)つに其(そ)の品(しな)の正(ただ)しきが故(ゆえ)、御門(みかど)の御定(おさだ)めを蒙(こうむ)りて、名(な)をば「とうちんこう」と申(もう)し、此(こ)の透頂香(とうちんこう)の三字(さんじ)をば冠(かんむり)の形(かたち)に彫(ほ)り附(つ)け、御自筆(ごじひつ)の額(がく)を賜(たまわ)るにより、何(いず)れの地(ち)へ罷(まか)り出(い)で候(そうら)うても、虎屋(とらや)藤右衛門(とうえもん)と申(もう)す看板(かんばん)を掲(かか)げ、天下(てんか)に並(なら)ぶ者(もの)なき薬(くすり)と広(ひろ)め申(もう)す。

【第3ブロック:薬の外観と効能】
去(さ)る程(ほど)に、この薬(くすり)、一粒(ひとつぶ)舌(した)の上(うえ)に載(の)せますると、たちまち透頂(とうちん)するが如(ごと)く、胃(い)の腑(ふ)に落ちて、冷(ひ)えを去(さ)り、気(き)を通(とお)し、宿食(しゅくじき)を消化(しょうか)し、諸毒(しょどく)を散(さん)じ、百病(ひゃくびょう)を治(じ)す。
其(そ)の薬(くすり)をば、我(わ)が家(いえ)の秘薬(ひやく)として、代々(だいだい)伝(つた)え申(もう)す。此(こ)の度(たび)、御江戸(おえど)の御方々(おかたがた)へ御目(おめ)に掛(か)けんとて、遠路(えんろ)遥々(はるばる)参(まい)り申(もう)した。

【第4ブロック:早口言葉の言い立て(核心部)】
さて、此(こ)の薬(くすり)、第一(だいいち)の妙(みょう)には、舌(した)の廻(まわ)ることが銭独楽(ぜにごま)が裸足(はだし)で逃(に)げるが如(ごと)く、衒(てら)うこともなく、滞(とどこお)ることもなく、すらすらと申(もう)し立(た)て申(もう)す。
サダ、アカサタナ、ハマヤラワ、オコソトノ、ホモヨロヲ、一(ひと)つへぎへぎに、へぎほしはじかみ、盆豆(ぼんまめ)、盆米(ぼんごめ)、盆牛蒡(ぼんごぼう)、摘立(つみたて)の豆(まめ)、摘立(つみたて)の米(こめ)、摘立(つみたて)の牛蒡(ごぼう)、志豆(しず)が畑(はたけ)の麦(むぎ)直蒔(すくま)き、あわ、ひえ、黍(きび)、小豆(あずき)をば、落(お)とし入(い)れて、摺(す)り鉢(ばち)の鉢(はち)に擂(す)り附(つ)け、此(こ)の薬(くすり)をば練(ね)り伸(の)ばし、伸(の)ばし練(ね)りたる薬(くすり)の味(あじ)わい、舌(した)の先(さき)へ載(の)せて、転(ころ)ばし、転(ころ)ばせば、胃(い)の腑(ふ)に落(お)ちて、心地(ここち)爽(さわ)やかになり申(もう)す。
京(きょう)の生鱈(なまだら)、奈良(なら)なま学(まな)鰹(がつお)、ちょと四五貫目(しごかんめ)、お茶立(ちゃた)ち奴(やっこ)一杯(いっぱい)飲(の)め、杯(さかずき)のそこへちょっと突(つ)っ込(こ)んで、飲(の)む奴(やつ)は、飲(の)まぬ奴(やつ)よりよく飲(の)む奴(やつ)じゃ。
隣(となり)の客(きゃく)はよく柿(かき)食(く)う客(きゃく)だ、向(む)こうの胡麻殻(ごまがら)は荏(え)の胡麻殻(ごまがら)か、真(ま)胡麻殻(ごまがら)か、あれこそ本(ほん)の真(ま)胡麻殻(ごまがら)。
歌(うた)う買(か)い手(て)に、躍(おど)り手(て)に、言(い)い合(あ)わせ、言(い)い合(あ)わせ、合(あ)わせ口(ぐち)の、青竹(あおだけ)茶筅(ちゃせん)で、御茶(おちゃ)ちゃっと点(た)てて、召(め)され候(そうら)え。

【第5ブロック:結び】
いや、はや、一粒(ひとつぶ)呑(の)み込(こ)めば、胸(むね)の閊(つか)えも忽(たちま)ち消(き)えて、気力(きりょく)満(み)ち満(み)ち、声(こえ)朗(ほが)らかになり申(もう)す。
御立会(おたちあい)の御方々(おかたがた)、此(こ)の薬(くすり)の御用(ごよう)あらば、何(いず)れの宿(しゅく)へ罷(まか)り越(こ)しても、小田原(おだわら)の虎屋(とらや)藤右衛門(とうえもん)、圓斎(えんさい)が店(みせ)へと、お尋(たず)ねなされて、御求(おもと)めなされ候(そうら)え。

「拙者親方と申すは」の意味と冒頭の文脈

冒頭の「拙者親方と申すは」というフレーズは、「私の親方(主人)と申しますのは」という意味です。語り手である外郎売は、主人の身元や店舗の所在地を群衆に対して堂々と説明し、行商としての信頼を獲得しようとしています。

東海道の要所である小田原の宿場町の情景を鮮やかに描写し、自らの扱う薬がいかに由緒正しいものであるかをアピールする、巧みなセールストークの導入部となっています。

中川 明日香
著者

中川 明日香

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。