1月15日を中心に行われる小正月行事は、地域社会の結びつきを再確認する特別な節目だ。伊那谷において「まゆ玉」を飾る風習は、主として農家の冬仕事と深く結びついていた。柳やミズキの枝に、米粉を練って作った団子を蚕の繭に見立てて取り付ける作業は、来る春の豊作を前祝いで祈願する「予祝(よしゅく)」の意義を持っている。
2026年の今年、伊那の各地では伝統的な飾り付けのワークショップが活発に開催されている。古くから伝わる飾りの秘密は、団子の色や形に隠された意味にある。赤は魔除け、白は清浄、そして繭の形は養蚕の繁栄を表す。神棚に供えられた後、小正月が終わると団子は焼き直されて家族で味わわれる。この「食べることで無病息災を得る」という循環こそが、地域の人々の身体と心を育んできたのだ。