長年にわたり、感染症学の世界では「5マイクロメートルより大きい粒子は飛沫」「それ以下は空気中に浮遊する飛沫核」と二分されてきた。だが、流体力学の専門家やエアロゾル研究者が突きつけたデータは、この境界線があまりに単純化されすぎた神話であったことを証明している。
咳やくしゃみ、あるいは単なる会話によって口から放出される飛沫は、大小さまざまなサイズのグラデーションを描く。大きな水分を含んだ飛沫は1メートルから2メートル以内に落下するが、水分が蒸発して軽くなった微細な粒子は、気流に乗って数メートルから数十メートル先まで漂い続ける。最新の知見が示す新基準では、粒子が「即座に落下するか」「空中に滞留して部屋全体を満たすか」という挙動そのものに焦点が当てられており、もはや画一的な距離の確保だけでは安全を担保できない。