堀の造形を支えているのは、モチーフとなる生物への深い敬意と観察眼だ。甲虫、蜘蛛、あるいはエビやカニといった節足動物。それらの肉体は、進化の過程で研ぎ澄まされた完璧な機能美を持っている。
自然界の幾何学構造を読み解く
外骨格の継ぎ目、節々の角度、表皮の細密なテクスチャー。堀は生物の構造を解剖学的に分解し、脳内で再構築する。自然が作り出したデザインには無駄がない。その無駄のなさを磁土という無機質な物質で再現することこそが、彼の表現の本質である。
生の儚さと磁器の永久性
昆虫の命は短い。数日から数ヶ月で命を落とし、その儚い肉体は風化していく。一方で、高温で焼き締められた磁器は数千年の時を超えて形をとどめる。堀貴春は、最も儚い存在である生物の造形を、最も永続的な素材である白磁へと置換することで、時空を超えた美のパラドックスを作り出している。